Collection: ε = λ/ L
無造作に置かれた瞬間に、そのものの魅力は集約されている気がします。
鞄の魅力のひとつとして「自立性」を考えるとき、単純に硬い素材を選ぶことも一つの方法ですが、それだけでは何だか味気ない。
素材の特性を活かしながら、パターンと縫製によって自然な自立性を確保することがいつも目指しているところです。
一度、袋状に仕上げた鞄の縫合部を外側からつまむように縫う手法はメゾンブランドなどでも見られます。
この手法を用いて超高密度織物を仕立てることで、生地が幾重にも重なった鞄の縁が不自然にうねることは、手を動かしながら辿り着いた一つの発見でした。
(他の素材だと硬直に仕上がることや、そもそも内外径で距離合わせが難しくタックになってしまうこともある)
この偶発的な曲線が持つ佇まいはとても魅力的に見えました。
『新編 東洋的な見方(岩波書店、1997年)』 に収録されている「やわらぎ」のなかで鈴木大拙(1870-1966)は、以下のように述べています。
「新しいものには奥行がない。何もかも目に見えるだけである。古いものは、これに反して、深みを持っている。この深みに不思議がある。」(231項)
「経年変化」という言葉は、どうも形式的過ぎて好んで使ってきませんでしたが、角が立っていたものが年を経た結果として角がとれてやわらぎを感じる。
「『年を経る=やわらぎ』とは『親しみ』である」という大拙の言葉を知って、その仕組みが少しわかったような気がしています。
新しいと古い、対称と非対称、硬直と柔軟。
矛盾したものをくっつけたり離したり、遊び遊ばれながら、深みの不思議と対峙していきたいと思います。
*写真3-6枚目 ©Atsushi Tanno