コレクション: 善知鳥
Rigmarole
人通りの多い時間帯に目的もなく通りを歩くようにしています。人の癖や何かを見間違える瞬間、それを探しに行きます。ある日、道行く人の脱いだジャケットを雑然と持っている姿が気になりました。無意識的に腕にかかったジャケットの自重による自然なドレープ。
またある日、時代劇のワンシーンが思い浮かびました。流れるようなリズムで着物の袂から小銭を出し入れする所作。
着物から袖だけを切り取ったような形状のUTOUは縫い合わされていない上半部の両側から(袂に手を入れるように)荷物を出し入れできます。一枚の布と2本の紐という曖昧な作りは様々な使い方を想像させ、荷物を出し入れする所作も美しいです。
取手やショルダーテープと袋の接続部は大切なディティールです。強調するにしても隠蔽するにしてもリズム感を重視しています。2本の紐は内側の縫い代から直接伸び、接続部という要素を打ち消しています。
UTOUとは能の演目『善知鳥(うとう)』から名付けています。善知鳥とは鳥の名前です。親鳥が「うとう」と鳴くと子鳥は「やすかた」と鳴くといいます。ある僧が山で遭遇した猟師の亡霊が、家族に自分であることを伝える証拠として、着ていた着物の片袖を引きちぎって渡すという場面があります。殺生を生業とする人々の苦悩を陰影深く描いた悲惨な曲です。
*VARGUNESS/曖昧